【風俗】女子高生だってOLだってなんでもOKブログ:19/3/08
未熟児で生まれたわたしは病弱で、
小学校に入るまでは病院と縁が切れず、
入退院をくり返していた。
歌が得意なわたしは、
ベッドの上でおもちゃのピアノを叩いては歌い、
看護婦さんにあめや板チョコをもらっては、
上機嫌だったとママに聞かされた。
「三つ子の魂百まで」と言うけれど、
わたしのピアノ好きはその頃から始まったらしい。
わたしは戦後の混乱の中で小学校に入学した。
先生のピアノ伴奏に合わせて歌いながら
わたしもピアノがほしい、
弾けるようになりたいとずっと思っていた。
しかし敗戦後の衣食住にもこと欠く時代のこと、
バラック住まいのわたしの家にピアノは高嶺の花だった。
わたしが高校生になって間もない頃、
同じコーラス部に席を置く友人の家に遊びに行った。
応接間に黒塗りのピカピカのピアノが鎮座し、
友人が「弾いてもいいよ」と鍵を開けてくれた。
わたしは学校にある壊れかけたオルガンで練習していた
「春の小川」を両手で弾いてみたが、
わたしの春の小川はさらさら行かなかった。
友人の家で恐る恐る触れた鍵盤のひんやりと冷めたい感触と、
お腹にズンと響く重い音が、ピアノへの憧れを一層募らせた。
興奮さめやらぬわたしは
その夕方、親父にピアノを買ってほしいと懇願した。
親父は一瞬、困惑した表情をみせたが…
「この狭い家にピアノを置く場所が何処にある。
ピアノを弾く暇があったらもっと母さんの手伝いをしろ!」
吐き捨てるように言うと
親父は乱暴に障子を開け部屋を出て行った。
わたしは唇をかみしめ、
親父の少し痩せて小さくなった背中を見送った。
それ以後、ピアノの事は一切口にしなかった。